Bien-être

介護終了・子育てもほぼ終了で、やっとこさ時間ができたため生き方を「哲学する!」ブログを始めます。ブログタイトルの「Bien-être(ビヤンネートル)」とは、フランス語で「頭も心も体もここちよくいられる状態」のこと。おフランス風Bien-êtreの視点から考える暮らしのつぶやきとADHD息子を中心とする教育の問題が中心。

月に住んでいるもの。

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月に住んでいるものって?日本では、まあ「うさぎ」、ときに「かぐや姫」?というところが主流でしょうが、先日お遊び万葉集の会のときに、「 黄葉(もみぢ)する 時になるらし 月人(つきひと)の 楓(かつら)の枝の 色づく見れば 」といううたを教えてもらった。

中国では、月の中には巨大な「桂」の木があって、秋になるとそれが色づくので月がキレイに照りまさるらしい。この歌では「男が楓の枝を月のなかでかざしている」のだとか。

また、「天(あま)の海に 月の船浮(う)け 桂梶(かつらかぢ)かけて 漕ぐ見ゆ 月人荘子(つきひとをとこ)」という月の男が天の海に月の船を浮かべ桂のオールでこいでるよ!といううたと、

「天(あめ)の海に 雲の波たち 月の船 星の林に 漕(こ)ぎ隠(かく)る見ゆ」という天→海、雲→波、月→船、星→林にみたてているロマンチックなうたも教えていただいた。

で、思い出したのがこの絵本。酒井駒子の「よるくま」。かあさんぐまが、釣り竿もって星を釣っている場面が出てくる。

 

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 そして、フランスはといえば思い出すのが、トミー・ウンゲラーの「月男ジャン」月の満ち欠けに応じて体の大きさが変わる。これも絵本でお馴染みだけど、なんとアニメーションになっていた。フランス語できる方はYou tubeの自動字幕を設定してみるといいですよ。

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「私に名誉を 与へて下さい」太宰治がラッパーっぽい。

 

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本日まで、愛媛県美術館で行われている「川端康成東山魁夷展」。ポスターも地味だし、あまり心惹かれていなかったのだけど、谷崎・三島・太宰・岡本かの子林芙美子などなど超豪華文人たちの手紙が展示されているというので行ってきた。これが、とても楽しい。

 

その中で、太宰が芥川賞選考の前に、川端康成に送った手紙が展示されている。周りに面白いから見に行ってみてとオススメしたところ、サバサバ女子に一番不人気なのがこの太宰のメンヘラ手紙だった。

 

「困難の一年でございました 死なずに生きとほして来たことだけでも ほめて下さい」

 

「最近 やや貧窮、書きにくき 手紙のみを多く したためて居ります よろめいて居ります 私に希望を 与へて下さい 老母 愚妻を いちど限り 喜ばせて下さい 私に名誉を 与へて下さい」

 

とはいうものの、最初の引用の「生きてるだけで褒めてくれ」というこの発想はなかなかスゴイし、2番めの引用文は「最近 やや貧窮、書きにくき」で「n」とか「ki」がいっぱいだし、「したためて居ります」「よろめいて居ります」の後に怒涛の「下さい」3連発。でもって、音読すればわかる素晴らしいリズム感。完全にラップかポエムに思えて、個人的にはとてもかっこよく思える。

うちの息子、太宰のこの手紙を見習って、教授たちに単位をせがむリリックをかいてラップにし、EP作って金儲けすればいいと思う。

シャルル・アズナヴール、Charles Aznavour

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先日94歳で大往生したフランスの歌手シャルル・アズナヴール、私がはじめてAznavourを聞いたのは20代で、そのころから彼はすでにおじ(い)さんで、当時は熟女になってフランスに行くと彼のような男性が「マダーム」と素敵に声をかけてくれるもんだと信じていた。というか、今も、老女になってフランスに行ったらAznavourのような男性が出てきて歌いながら「マダーム」と口説いてくれるはずだとどこかで信じている。そして、今度は死んで天国に行っても……。

彼の歌はいろいろ有名なのがあるけれど、私のAznavourはどうしてもこのイメージ。女をゴージャスな気持ちにさせる歌詞と声。「奥様、あなたと一緒に寝ること。それは素晴らしいプログラム」って、韻を踏みながら歌う。一家に一つAznavour人形があれば、きっと多くの女がほんの少しご機嫌になるだろう。

Dormir avec vous, Madame
Dormir avec vous
C'est un merveilleux programme

フランスCNEDの通信教育

前々から「Gérontologie(老人学)」の勉強をしたいと思って、放送大学とか通信大学院とかいろいろ調べているのだけど、どれもイマイチぴんとこない。パソコンがWindowsのみ対応であったり、値段の問題があったり。で、ふと思いついてフランスの通信教育を調べてみた。介護関係の講座っぽいが、なかなかおもしろそう。講座が面白くなくてもフランス語の勉強にはなる。全部で10コースあって1コース90ユーロ、全部受けると669ユーロ。決〜めた!と思ったのだが、調べた結果、支払いが小切手と銀行振込のみ。めんどくさっ。手数料を考えると1コースからの選択はことごとく消える。週明けにでも、FX現受→プレステア経由海外送金の実験をやってみよう。

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1. La psychologie de la personne âgée (老人の心理)
2. Le poids des inégalités sociales sur la santé des personnes âgées (老人の健康に関する社会的不平等の重み)
3. Agisme : un nouveau racisme ? (高齢者差別:新しい差別?)
4. Syndromes démentiels et prendre soin (痴呆の症状とケア)
5. Complexité de la prise en charge de la personne âgée (老人介護の複雑さ)
6. Ethique et bientraitance (倫理とケア)
7. Vie affective des personnes âgées (老人の感情)
8. Autonomie et dépendance (自立と依存)
9. Le bien vieillir (よく老いる)
10. Une société pour tous les âges(あらゆる年代のための社会)

タイトルだけで想像するので日本語訳はかなり怪しい!ですが、まあこんな内容。仕事がら私に関係があるのは今のところ心理的側面だけなので、やはりチョイスでいくか?

Net FlixとTEDの足し算で現実世界が明るくなる。Net Flix 「グレイス&フランキー」

カンヌ映画祭とNET FLIXのフランスでの冷ややかな関係が物語るように、なんとなく劇場公開されない作品はアートとしてワンランク下のようなイメージが自分の中にも少しあった。連続ドラマよりも映画が上。ということで、気合も入れずに適当に見始めたNET FLIXのドラマシリーズ「グレイス&フランキー」。これが、新しすぎて、脚本も素晴らしすぎて、どっぷりハマりこんでしまった。

www.netflix.com詳細やあらすじは公式サイトで見ていただくとして、個人的にこの物語が秀逸に感じられたのは、なによりも、熟(老)女二人の人物設定。この中には、わかりやすく分類された女のステレオタイプが登場する。美貌維持に走る派自然志向に走る派。この女の分類は、おそらく年齢を超えて存在する永遠のステレオタイプでわかりやすい。食生活、男関係、ファッション、思考、家族関係、若い頃ならばおそらく二人が相容れることはまずない。けれど、共通の不幸や老いを経験するにあたって、二人の間には友情というよりも、「人間にとっての尊厳」を大切にしたいという共通感覚が芽生えてくる。年齢と共にのしかかってくる課題が、女たちを一つに。後日、老いについて語る美貌のジェーン・フォンダをTEDで見る。動画を見て思う。「人生の第三幕」は楽しそう。女が、年をとるのも悪くない。

www.ted.com

工藤直子の「しっぽ」に思う。犬の憂鬱。

 

工藤直子さんの『のはらうた』の中に、しっぽが主役の詩篇がいくつか登場する。「こいぬけんきち」くんは、「こころ」と題された詩の中で自分のしっぽをこころを表すツールとして紹介、「うれしいと かるく はためく」とうたう。

「あいさつ」という詩の中で主役となるのは、「へびいちのすけ」くんのしっぽ。いちのすけは、散歩しながら、しっぽのことが気になって「おおい げんきかあ」と呼びかける。すると少し離れた草むらから「げんき ぴんぴん!」としっぽが「ハキハキ」としたお返事、いちのすけは安心して散歩を続ける。

さて我が家の老犬、目も耳も弱っていて一日中寝てくらしているが、ここ数ヶ月で後ろ脚がほとんど立たなくなった。お散歩は好きで行きたり、しっぽをもってやるとチョイチョイ前進するのだけど、途中でヘナヘナと座り込む。オシッコもウンチも180度近くの開脚状態でよく言えばバレリーナっぽい。そんなわかりやすい変化の中、埋もれていたのが「しっぽ」の動き。あれもやはり筋肉だよね。そういえば、最近しっぽが「かるく はため」いているのは見たことがなく、常にげんなり!「はためく」のが見たくって、マッサージしたり、ちょっかい出したりいろいろやってみた。一瞬だけ「おもく」はためいたが、やはりフリフリするととてもかわいい。散歩もできず、しっぽフリフリもできない犬。それはそれで、別の趣がある。「こいぬけんきち」くんと比べてはならない。人間もおなじ。