工藤直子の「しっぽ」に思う。犬の憂鬱。
工藤直子さんの『のはらうた』の中に、しっぽが主役の詩篇がいくつか登場する。「こいぬけんきち」くんは、「こころ」と題された詩の中で自分のしっぽをこころを表すツールとして紹介、「うれしいと かるく はためく」とうたう。
「あいさつ」という詩の中で主役となるのは、「へびいちのすけ」くんのしっぽ。いちのすけは、散歩しながら、しっぽのことが気になって「おおい げんきかあ」と呼びかける。すると少し離れた草むらから「げんき ぴんぴん!」としっぽが「ハキハキ」としたお返事、いちのすけは安心して散歩を続ける。
さて我が家の老犬、目も耳も弱っていて一日中寝てくらしているが、ここ数ヶ月で後ろ脚がほとんど立たなくなった。お散歩は好きで行きたり、しっぽをもってやるとチョイチョイ前進するのだけど、途中でヘナヘナと座り込む。オシッコもウンチも180度近くの開脚状態でよく言えばバレリーナっぽい。そんなわかりやすい変化の中、埋もれていたのが「しっぽ」の動き。あれもやはり筋肉だよね。そういえば、最近しっぽが「かるく はため」いているのは見たことがなく、常にげんなり!「はためく」のが見たくって、マッサージしたり、ちょっかい出したりいろいろやってみた。一瞬だけ「おもく」はためいたが、やはりフリフリするととてもかわいい。散歩もできず、しっぽフリフリもできない犬。それはそれで、別の趣がある。「こいぬけんきち」くんと比べてはならない。人間もおなじ。